トップ画像は3.11の半年後に、ボランティアで訪れた岩手県大槌町で私が撮影したものです。災害は日常を破壊するのだということを、半年たってなお打ち捨てられているファミコンから感じました。
日常を可能な限り守るべく、自分への備忘録も兼ねて、東京の核家族(夫婦 + 乳児1人)の私たちが行っている防災対策をまとめます。
もくじ
震災直後の行動
日中はバラバラに行動している家族の間での、当座の集合場所を決めておきます。うちの場合は次の通り。
- 家が当該の災害で無事の場合は、家で集合。
- 何らかの事情で家が危ない場合は、事前に打ち合わせた指定避難場所に集合。
また、家族間で連絡が取れるように、災害伝言ダイヤルの利用方法に慣れておきましょう。171に電話するだけです。この際、伝言を聞きたい人の電話番号が必要になるので、家族の電話番号はどこかにメモしておきましょう。
また、そもそも3.11直後のように、東京エリアが住みにくくなるほどの被害が出たときには、一時的にでも家を捨てて、地方に逃げることにします。私と妻の親戚は関東および関西にそれなりに散らばって住んでいるので、たどり着けるところに居候します。
私は3.11を東京で経験したのですが、直後の買い占められたスーパーマーケットや、街中が暗くなる計画停電では、まるで戦時中のような緊張感を感じました。福島第一原発にヘリで放水をしていた頃、たまらず大阪の知人の元へ転がり込みました。大阪での生活は何の影響も受けておらず、日常の中にいるだけで心が穏やかになったのを覚えています。
以降では、我が家で行っている備蓄等をまとめます。備蓄の前提は、家が倒壊や焼失せずに残っていること、そしてその目的は、長距離移動の交通機関が復旧するまでの数日間サヴァイブすることです。
住むところ
前提として、東京に住んでいる限り、いつ直下型の大地震が来てもおかしくないものと思っています。そのため家探しの際には、最低でも新耐震基準であることを絶対条件にして探しました。
今住んでいる家は下記の要素を満たしているので、直下型の地震が来ても即死することはないと思っています。
最も恐ろしいのは火災です。私の住んでいるエリアは木造の戸建てが多く残っており、災害発生後も数日間は火災に巻き込まれる可能性があります。関東大震災でも、死者の9割は延焼による死者だったと言います。火災による被害について興味のある方は「被服廠」でググってください。
都市部の大地震や空襲でも発生して大規模な災害をもたらしてきた火災旋風をとらえた写真。 pic.twitter.com/gp12t82WS8 内部温度は1000度を超え、酸素のある方に動いて呼吸器の損傷による窒息死をもたらす。
— Tetsuya Kawamoto (@xxcalmo) May 7, 2014
現代の東京においても状況は大きく変わりません。内閣府による首都圏直下型地震の被害予想でも、揺れによる建物の全壊家屋:約175000棟、死者最大約11000人なのに対し、焼失により損なわれる家屋:約412000棟、死者最大約16000人と、火災による被害のほうが甚大だと予測しています。
地震発生直後から、火災が連続的、同時に多発し、地震に伴う大規模な断水による消火栓の機能停止、深刻な交通渋滞による消防車両のアクセス困難、同時多発火災による消防力の分散等により、環状六号線から八号線の間をはじめとして、木造住宅密集市街地が広域的に連担している地区を中心に、大規模な延焼火災に至ることが想定される。
【地震火災による焼失: 最大 約 412,000 棟、 倒壊等と合わせ最大 約 610,000 棟】
同時に複数の地点で出火することによって四方を火災で取り囲まれたり、火災旋風の発生等により、逃げ惑い等が生じ、大量の人的被害がでるおそれがある。
【火災による死者: 最大 約 16,000 人、 建物倒壊等と合わせ最大 約 23,000 人】
(内閣府:『首都直下地震の被害想定と対策について』より抜粋)
エリアで起こる火災は避けようがないので、日頃から都市計画にアンテナを立てつつ、震災後数日間は新たな火災が起こる可能性があることを心に留めておく、くらいしかできることはありません。
部屋の中
寝室には倒れるものを置かないようにしています。というか、そもそも部屋を広く見せるためにも、背の高い家具をほとんど置いていません。また最近産まれた子供を床に寝かす際にも、落下物がない場所に置くようにしています。
家の主要な窓には飛散防止フィルムを貼っています。貼るのが少し大変でした。
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キッチンはIHなので、家の中のガスから火が出ることはないと思いますが、漏電による出火の可能性もあります。念のためキッチンにおしゃれ目な消化器を置いています。
モリタ宮田工業 住宅用強化液(中性)消火器 キッチンアイ シャンパンゴールド MVF1HX
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また、普段からスリッパを履いて生活しているので、床に割れた食器やガラスが散乱しても、歩く分に支障はないだろうと思っています。欲を言えば底の硬い靴を履きたいところですが、防災用だけに枕元にスニーカーを置いておくのももったいないと思うので、まずはスリッパで玄関にたどり着くことを目指します。また直下型地震が置きた際には手元のものがすべて吹っ飛ぶので、枕元にバックアップのサンダルとメガネケースをくくりつけました。
消耗品
飲料・食料
飲料については、炭酸水と野菜ジュースをまとめ買いすることで備蓄しています。食料のみならず飲料も、定期的に消費しないとダメになるもの。なのでウチでは、天然水ではなく、なんでも割って美味しく飲める炭酸水を備蓄しています。
食料は、美味しいと噂の尾西のアルファ米と缶詰を3日分程度。缶詰はさば味噌煮、カレーなど。またカロリーメイト的な栄養食品も防災バッグに詰めています。
試しにアルファ米を食べてみました。左がエビピラフ、右が山菜ご飯(田舎ご飯)。スキー場の食事より美味しいです。調理は熱湯で15分、水で60分待つだけです。水しか使えない被災時に、1時間待つのは辛いので、事前にやっておいてよかったと思います。
アルファ米その他の調理にはお湯が必要になります。そのため携帯用ガスコンロを用意しています。お湯は後述する、湯たんぽにも使えます。
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衛生用品
まず、体を綺麗にする系グッズたち。
水がなくても体、歯、髪を綺麗にするグッズをリュックに詰めています。正直シャンプーはどこまで効果があるかわかりませんが、ないよりマシかと。
アクティ からだふきタオル 超大判・超厚手 40×30cm 30枚 (片手でらくらく取出し口ストッパー)
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また、意外と大活躍するのではないかと思っているのが、赤ちゃん用のおしりふき。うんちのついた赤ちゃんのお尻を、赤ちゃんの柔肌にダメージを与えず綺麗にすることができるのですから、大人の肌にも優しいはず…と思っています。
ピジョン おしりナップ (やわらか 厚手タイプ) 【こすらずすっきり・純水99% 無添加】 詰めかえ用 おしりふき 80枚入×16個パック (1280枚入)
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その他、通常時でも使うグッズの中では、ラップを常時多めに買っています。
水が潤沢に使えない状況下では、食事ごとに新しいラップを食器に貼ることで、食器洗いが不要になるからです。
災害時のトイレで困るのは水が流れないこと。家が残っていれば便座はおそらく生き残るので、生き残った便座を活用できるこちらの簡易トイレを複数個、トイレに備蓄しています。
衛生用品で日常使いにもイチオシなのが、キズパワーパッドです。これは湿潤治療と言って、カサブタを作らない治療法から考案された絆創膏です。切り傷、擦り傷、なんでもいけますし、とにかく傷まない。
BAND-AID(バンドエイド) キズパワーパッド 大きめサイズ 6枚 管理医療機器
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湿潤治療についてはこちらの本に詳しいです。発行されたのは約10年前になりますが、この本を読んで以来、キズパワーパッドにはお世話になりっぱなしです。
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
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赤ちゃん用品
赤ちゃん用品は普段から大量にストックがあるので、特段備蓄は考えていません。また液体ミルクはこの道の人には常識だと思うのであえて触れません。
災害時には熱が使いにくく、殺菌に苦労します。その場合、新品の紙コップを都度使い捨てることで、安全にミルクを与えることができるようです。
水
飲料用以外にも、生活用の水を用意しておくようにという記述があります。大人2~3lの水が必要になるそうです。が、これまで挙げてきた衛生用品があれば、衛生面は水を使わなくても解決できると思っています。そのため「生活用」に限定した水は用意していません。念のため、給水所から持って帰るためのタンクは用意しています。
電気
電気も、基本的にはなくてもそこまで困らないものと思っています。
日常の中で電気を使う目的は、加熱(エアコンやヒーターなど、電気から熱への変換)、照明(光への変換)、機械的動作(モーターで動作するもの)のいずれかですが、そのいずれも災害時には電気以外のエネルギーで代替されるからです。
熱に関しては、寒い分にはガスコンロでお湯を沸かせます。寒い場合、湯たんぽで暖を取れます。
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問題は夏場です。30度を超える暑さの中で長期間停電が起きた場合、特に高齢者や乳幼児がいると、家の中が危険な環境になります。そしてそれに対しては、根本的な対策はありません。エアコン(冷房)の素晴らしさよ…。
以下の記事にまとめられていますが、基本的には水をよく飲む、涼しい場所を探す、冷えピタを貼る、くらいなものです。
唯一、扇風機を動かすための電源の確保は検討の余地があるかもしれません。我が家では現在、妻に必要性を説得しきれず、大型の蓄電池の購入を保留しています。大容量蓄電池と太陽電池の発電・蓄電システムって、防災以前に男心をくすぐるんですよね…。
電気エネルギーの中で生命線なのは、スマホの電源だと思っています。
携帯は震災直後は不通になるかもしれませんが、連絡手段として持っておくに越したことはありません。またスマホは、写真、メモなどの記録機能、内蔵ライトの照明機能、内部にダウンロードされた地図や、地上のインフラに依存せず使えるGPSなどが、被災時には重宝するものと思います。
そのため我が家では、妻と私は常にスマホ用のバッテリーパックを携行しています。
その他・ドローン
冒頭で、エリアで起こる火災はどうしようもない、という話をしましたが、唯一知る方法があります。それは、ドローンで周囲の様子を把握すること。リアルタイム動画伝送ができるドローンを使えば、自宅の周囲のどこで火の手が上がっているか把握することができます。
現状、人口密集地での個人のドローンの飛行は、ほぼすべてのエリアで禁止されています。このため個人でのドローン所有が災害時に役に立つことは、あまり現実的ではありません。
しかし災害時には、消防の手が回りきらないことが想定され、町内会レベルでの自助努力に頼らざるを得ない場面が必ずあります。また映像を取得することが目的の報道のヘリより、情報の取得が目的の地域住民のドローンが優先されるべきとも思います。個人と言わずとも、地域レベルでドローンを導入するのがいい落とし所だと思いますがどうでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。ここまで読んでくださった方は、非常に防災意識の高い方だと思います。ぜひそのついでに、家族や身近な方と、具体的な防災プランについて話し合ってみてください。考えるだけで生存率は上がると思います。