これまで2回にわたり、子供の発達の概要と、それに応じたおもちゃの役割についてまとめてきました。3回目の今回は、具体的に各段階において、どのようなおもちゃが子供から好まれるのかまとめます。
寝たままの時期(新生児~8ヶ月ころまで)
メリー
メリーは主に寝たままの子供を楽しませるために用いられます。この段階では「眼の前で動いているもの」に注目するため、ベビーベッドの近くで親が動いているだけでも同じ効果は得られます。
ガラガラ
ガラガラは古今東西どの文化でも愛用されてきたおもちゃです。特筆すべき点はありませんが、子供はこれを舐めるので、エッジが無いもの、しっかりした素材で作られたものが良いようです。
ガラガラは、自分で動くようになる前の子供に対しては、親が刺激を与えるために。子供が一人でおすわりをするようになってからは、自分で音を立てて遊ぶために、と、長く遊べます。
おすわり時期(8ヶ月ころ~2歳前後)
日用品はなんでもおもちゃ
ずり這いを始める7~9ヶ月くらいの子供にとって、手に取れるものはなんでもおもちゃになります。この頃の子供は、決然と周りのものに猛攻撃をしかけます。これは、子供が触感を楽しんでいるだけでなく、手に取れるものの耐久性を確かめ、モノの特性を学んでいるとも考えられます。
この時期の子供は、凝ったおもちゃよりも、危なくない範囲の日用品をなんでもおもちゃとして楽しみます。おもちゃとしては、例えばだるまのような倒しても起き上がるものや、手頃な大きさのボール、その他様々なおもちゃを与え始めることができます。
この歳の子供は下手なおもちゃより日用品がなんでもおもちゃになる例 pic.twitter.com/ugDUtLRyHC
— ぽよ@8m (@2019apr) 2020年1月8日
認知能力を試すおもちゃ
1歳くらいに理解する、対象の永続性を試すおもちゃとして、びっくり箱があります。それ以外にも、先に書いたとおり、布袋や何らかの箱にガラクタをいれて、ものを入れたり出したりするおもちゃを作っても、子供はいい反応をします。
他にも、特定の形のブロックを同じ型の穴にはめるおもちゃなども古くからあります。これは1歳半くらいからが適当です。はめ込みのおもちゃは、自分の動作があっていたかどうかの判断が即座にわかる、という点で、フロー状態の定義にも合っています。
積み木
シンプルで、かつ最も応用範囲が広いのが積み木です。
まず積み木は、認知能力と指先の能力の点で、目と手の協調動作の発達を助けます。ある積み木を持ち上げ、他の積み木の上まで持っていき、積み上げられたものを壊さないようにその上に置く行為は人間にしかできません。
次に、積み木は、その後の様々な遊びの付属品として使うことができます。プラレールを立体的に作りたければその台座に、人形遊びの家や家具に、また動物の人形で農場を作る際にはそのフェンスになります。
それ以外にも、積み木は子供の抽象的な思考を成長させる助けにもなります。同じ大きさの積み木は、子供がはじめて数の概念に触れる際の接点になります。また、「この積み木はこのおうち、この積み木は向かいのおうち…」というように、子供が何かを表現する際の道具として、比喩的に使われることもあります。
歩きはじめてから(2歳くらい以降)
手押し車
歩き始めた子供にとって、押すおもちゃと引っ張るおもちゃは王道のおもちゃです。古くはマヤ文明にも、車輪のついたおもちゃを使用した形跡が残っています。
押すおもちゃはお年寄りにとっての杖と同じく、支点が1点増えることに加え、歩く際にも進行方向の視野に入るので、視覚的にも楽しめます。
引っ張るおもちゃは歩きの妨げになるため、順番としては押すおもちゃを上手く使えるようになってから与えると良いでしょう。
なお、屋内で使う歩行補助器は、よほど広い家でない限り、転倒や墜落のリスクを高めるだけなのでおすすめできません。
運動遊具
都会で育つ子供は、慢性的に運動不足になりがちです。この解消のためにも、ジャングルジム、ブランコ、滑り台などの公園の遊具は欠かせません。日本の公園は、近年ではボール遊びが過剰に禁じられるなどの問題はありますが、住宅地にこれらの遊具が密度高く点在している点で恵まれています。
人形・ぬいぐるみ
人形や動物のぬいぐるみも、古典的で広く親しまれているおもちゃです。具体的な用途としては、2歳前~6歳くらいにかけて行われる「ごっこ遊び」において登場人物として使われます。が、人形やぬいぐるみは、このような具体的な目的以外にも、ただ近くにあるだけで心理的に安心する、といった、少し広い意味合いで親しまれているようです。
子供に人形を贈る際、子供によって好みがはっきり分かれるため、最初から正解を見つけることはできません。おもちゃ売り場に子供を連れて行って、それとなく反応を見るのが一番良さそうです。
どのようなレベルのおもちゃを与えるべきか?
子供の発達は人それぞれですが、年齢に応じた一般的なパターンがあります。おもちゃに書かれている対象年齢はこれに基づいて書かれています。おもちゃを通じて適度な発達を促すためには、この年齢をどの程度参照すべきでしょうか。
これは無視してしまって良さそうです。ずりばい前の子供に積み木を与えても流石に難しそうですが、せめておすわりができるようになってからは、子供は自分の能力に応じた遊び方を自分で発見します。
まとめと参考文献
古今東西愛されてきた王道のおもちゃをまとめました。ここで示したおもちゃは、いずれも文化を問わず古くから愛されてきたものばかりです。
「おもちゃの役割」の記事にも書いたように、おもちゃはあくまで子供がなにかに夢中になるためのツールでしかありません。世の中には様々なおもちゃが売られていますが、まずは今回紹介したおもちゃを押さえた上で、子供の反応を見ながら徐々に広げていくのが良いでしょう。
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