ぽよろぐ

30代半ば、一児の父、技術営業職。仕事のスキルを家庭に持ち込むのが好き。

僕たちは社会保障とどう向き合っていくのか

高齢化社会のイラスト

はじめに

日本の財政は赤字を垂れ流しています。そしてその支出の大部分は社会保障費で占められています。さらに、この国の高齢化率は今後も悪化の一途をたどり、一人あたりが負担する社会保障費も悪化していきます。端的に言って、いま街なかで目にする高齢者より、将来あなたが(そして私も)良い待遇を受けられる可能性は非常に低いです。

…という事実を、この記事では淡々と解説していきます。

現在の日本の財政は年間約20兆円の赤字である

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企業会計ベースで見た平成29年の日本の財政 引用元[1]より抜粋

日本政府のお財布は一般会計と特別会計に分かれていて、さらにその大部分を国債の発行と償還が占めています。このままではよくわからないので、何を見たいかによって着眼点を工夫する必要があります。

今回私が知りたいのは純粋なキャッシュフローなので、財務省が公表している企業会計ベース(発生主義)の数字(上図)*1でみます。すると、1年間の歳出が145兆円なのに対して、歳入は127兆円と、年間約18兆円の赤字となっています(平成29年度時点)。

年間18兆円の赤字が継続的に続いた場合、10年間で180兆円、50年で900兆円の赤字です。実際、日本の公債残高はそのくらいのペースで上昇し続けており、令和元年度末で計900兆円弱となっています。ピンとくる数字に直すために、これを人口で割り算して、国民1人当たりの借金に換算すると、713万円/人になります。

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日本の公債残高 引用元[4]より抜粋

赤字国債の発行は先進国ならどこでもやっているじゃない、という疑問も湧きますが、日本の公債残高は他国に比べ飛び抜けて悪く、対GDP費で2.4倍程度となっています。以下が公債残高の対GDP比の国際比較です。

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債務残高の国際比較(対GDP比) 引用元[4]より抜粋

ここまでをまとめると次のとおりです。

  • 日本は毎年20兆円程度の赤字となっている。
  • さらに累積赤字が900兆円程度ある。これはGDPの2.4倍程度である。
  • これを国民1人あたりに置き換えると、一人あたり713万円分、4人家族で3000万円弱の借金を背負っていることになる。しかもこの借金は、一人あたり毎年15万円程度、4人家族で60万円程度増え続けている。
  • 財政の健全化、すなわち借金の返済を完済するには、年間のキャッシュフローを現状より年間30兆円の改善し、毎年10兆円の黒字化が達成できたとしても、90年かかる。

国の赤字に関しては諸論ありますが、何もせずに解決するわけはない、というのが私の考えです。

国の支出のうち3割が社会保障費である

ではこの赤字を解消するために何に着眼したら良いのでしょうか。歳入を増やすことと歳出を減らすことのいずれかのアプローチがありますが、ここでは歳出を減らすことを考えます。

国の歳出のうち、公債返還以外の項目で、もっとも多い費目は社会保障費です。先ほど、国の会計の計算の仕方は様々あると述べましたが、社会保障費に割かれる割合は、企業会計ベースで年間50兆円程度(歳出全体の34%)、純計ベースでも年間95兆円程度(同27%)(引用元[2]参照)、いずれも歳出全体の3割程度となっているようです。

純計ベースで他の予算をみてみると、社会保障費の次に大きな項目が公共事業で7兆円(これは社会保障費のたった8.1%)、教育・科学で5.5兆円(同5.8%)、防衛費で5.3兆円(同5.6%)と続きます。やはり社会保障費は桁違いに大きい。国全体の20兆円の赤字を解消するためには、社会保障費を削減することが避けて通れないことがわかります。

しかし、それは簡単ではありません。

増加し続ける社会保障給付費

ここらへんから、官僚が2019年4月にまとめた社会保障に関する資料(引用元[4])の解説に入っていきます。元の資料も面白いので時間のある方はそちらも見てください。

まず、我が国の社会保障費は、30年前の1990年に比べて額面で+22.4兆円(1年で7500億円程度)増えています。ちなみに20兆円というとヨーロッパの小国(ベルギー、スイス、スウェーデンとか)の国家予算くらいです。ここ30年で我が国には、老人しかいないスイスが新たに誕生したことになります。

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引用元[4]より抜粋 1990年と2019年の社会保障費比較

当然、厚労省も指をくわえて社会保障費の増大を眺めているわけではありません。社会保障費の合理的な見直し策としてできること、すなわち、高額治療に使われる薬価の引き下げ、協会けんぽへの補助金引き下げ、生活保護や高齢者への健康保険の軽減特例などの見直しなどを実施しています。これらは最終的な歳出に対し、年間1200~1700億円程度の抑制に繋がっているとされます。

つまり恐ろしいのは、政府としても社会保障費の歳出を抑えるために可能な限りのことはやった上で、毎年これだけ増加しているのです。

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引用元[4]より抜粋 社会保障費の実質的な伸びについて

これらの努力が報われないのは、人口動態という大きな構造が悪化しているからです。下の図は、今後40年間の働き手と高齢者の増減を模式化した図です。現役世代が減り続け、後期高齢者が増え続ける、というスパイラルが見て取れます。現役世代として、しれっと74歳までがカウントされていることも恐ろしいですが。

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引用元[4]より抜粋 今後の人口動態の変化

高齢化が進むことで、現役世代の社会保障費負担が相対的に増えることは予測できます。下の図は、それを定量的に示した結果が示されています。年代別の、1人あたりの年間の医療費と介護費に対する国の補助額を比較すると、0~65歳の平均が約3万円なのに対し、75歳以上の平均は50万円弱となります。国民一律10万円もらって喜んでいる場合ではありません。

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引用元[4]より抜粋 年齢階級別一人あたり医療費と介護費

僕たちに何ができるのか

端的に言って、以下のいずれかしかないと思っています。

  • 自己防衛。社会保障に負担をかけない、健康な身体を維持する。
  • 自己防衛。この先定年は無尽蔵に伸びること、社会保障費はどんどん削減されることを前提に、自分の身は自分で守る資産形成をすること。
  • 社会保障費にメスを入れられる胆力のある政党・政治家に投票すること。 
  • 子供を産み、育て、人口ピラミッド改善に貢献すること。
  • 社会保障を改善・革新すること。そのための取り組みやビジネスを支援すること。

次回、気が向いたら、上記に関連して、各政党ごとの社会保障政策の比較でもしてみようかと思います。

引用元

[1] 財務省 特別会計ガイドブックより「国の財政規模の見方」

[2] 財務省 統計表第18表 平成20年度以降一般会計及び特別会計の主要経費別純計

→こちらのデータは加工してGoogleスプレッドシートでも公開しています。注意点としては、令和元年および令和2年の計算は当初予算を、それ以前は決算結果を使っているので、そこだけ数字の質が違うことに注意してください。

日本の国家予算 - 純計 - Google ドライブ 

[3] 財務省 財政制度分科会(平成31年4月23日開催)資料一覧より資料「社会保障について」

[4] 財務省 財政に関する資料

 

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*1:ただしここで示す企業会計ベースは、支出があっても国の資産となるものは支出に計上されず、資産となります。そのためもしかしたら老人ホーム公共事業や、おそらく防衛や科学技術の設備投資分も支出に現れておらず、甘めの見方となっているように思えます。