うちの子が8ヶ月になりました。
はいはいやおすわりなどできることが増えてきて、そろそろおもちゃをいろいろ買えあたえるか…と考え始めました。
でも、ちょっと待って。
これまで私、おもちゃの選び方なんてちゃんと教わったことありません。
このままでは、この先十数年続くおもちゃ選び沼に丸腰で乗り出し、息子と「あれ買って」「本当に必要か考えなさい」のデッドヒートを繰り広げ、家にガラクタの山を積み上げることになりかねません。
せめておもちゃ選びの基礎だけは専門書を読んでまとめておこう…と思ってまとめたのがこちらの記事です。
この記事を読むことで、基本的なおもちゃの役割がわかるようになります。もうすでにおもちゃを買い与えている方にとっても、「そういう視点もあるよね」と頷いて頂けたら幸いです。
この記事の前提となる、子供の発達段階のまとめは前回の記事でまとめています。また、結局どのおもちゃを買えばええねん、という点に関しては、次回の記事でまとめます。
おもちゃの役割
改めて考えることのない「おもちゃの役割」について考えてみましょう。ずばりおもちゃとは、子供がフロー状態に入るための小道具、と定義することができます。
フロー状態
フロー状態とは、アメリカの心理学者であるチクセントミハイが定義する、人が最高に集中している状態のことです。最近では心理的安全性などの言葉ともに、ビジネスシーンでよく聞かれます。フローの状態(ゾーンに入っている状態)とは、具体的には以下の9つの要素を満たしている状態とされています。
- 常に次にやるべきことがはっきりわかっている
- 自分の行動に対し、その行動がどの程度良くできているのか即座にフィードバックがある
- 簡単すぎず難しすぎず、挑戦と能力が釣り合っている
- 思考があまり入らず、意識と行動が融合している
- 気を散らす者が意識から締め出される
- 失敗への不安がない
- 他者からの評価を気にするなどの、自意識が消滅する
- 時が経つのを忘れ、時間間隔が歪む
- 活動が自己目的的になる
いかがでしょうか。9つの点では多すぎるので、さらにざっくりまとめると、以下の3点に集約されます。
- 適度なマイルストーンがある
- 即座にフィードバックがある
- 挑戦と能力が釣り合っている
これが、子供が遊びに熱中するための条件になります。これを満たすのは、具体的にどのような遊びでしょうか。以下ではいくつかのキーワードをもとに考察していきます。
できごと
特に乳幼児の子供は、ある「できごと」が思いがけなく起こったと感じることによって喜びます。例えば誰もがやる「いないいないばあ」の遊びは、親が顔を隠して子供を若干の緊張状態に置き、「ばあ」で顔を出して緊張を解消する、というような「思いがけないできごと」の遊びと言うことができます。すなわち「できごと」とは、緊張の高まりとその解消があるもの、終わり方が期待に沿ったものや、逆に意外性のあるものと定義できます。
この「できごと」を自分で起こせると感じたときに、子供の感情はさらに高まります。例えば、積み木やペットボトルを倒したり、紙を破いてみたり。もう少し大きな年齢だと、穴にものを入れてみたり、などが挙げられます。
催眠効果
体感的、または視覚的に、ある種の催眠作用をもたらすおもちゃもまた、子供を遊びに集中させます。ここでの「催眠」とは、眠くなることではなく、対象に対して夢見心地になるように夢中になる感覚を指します。
体感的な催眠とは、例えばブランコの、体全体を一つのリズム運動に巻き込んでしまう遊びがいい例です。ほかにも視覚的な催眠として、回るコマを眺めたり、スノードームを眺める、などがあります。
身体能力の補強
「挑戦と能力の釣りあい」を考える際の「能力」として、身体能力、認知能力、そして想像力について考えます。
身体能力を補強するためのおもちゃとしては、大きな動きを支援するものとして、ボール、押し車、ブランコその他公園にある遊具などがあります。また指先の細かな動きを支援するおもちゃも、各種知育玩具として様々なものが売られています。
保育者に読み聞かせてもらう絵本以外の全てのおもちゃは、目的がどうであれ子供が自ら身体を使って遊ぶものです。そのため、適度な挑戦をさせるために、まずはその子の身体能力に合ったモノを渡すことが基本になります。
身体能力の段階は、主に次のように分けられます。
- 産まれてからずりばいを開始するまでの、ひとところに寝たままの状態になっている時期。大体7~9ヶ月ころまででしょうか。
- ずりばいを開始してから一人で歩けるようになるまでの時期。大体2歳前後ですかね。
- 一人で歩くようになってから。
認知能力の補強
認知能力とは、こちらの記事で紹介した、対象の永続性(モノを一時的に隠しても、そのモノがそこにあり続けることの理解)や、基本的な物理法則などを理解する力のことです。
対象の永続性を試すおもちゃとして一番シンプルなものは、中身の見えない布の巾着袋に手頃なモノを入れて取り出させる、というものです。その他、積み木やいわゆる知育玩具の大半はここに分類されます。
想像力の補強
子供の想像力は、主に2歳~6歳頃に見られるごっこ遊びにおいて顕著に見られます。ここで活躍するおもちゃが、人形やミニカー、おままごと道具など、何かを模倣したおもちゃたちです。
木のミニカーが良いか、精巧なトミカよいか、など細かい議論はありますが、「子供が気に入ったものなら何でも良い」が回答です。木のおもちゃには手触りの良さが、トミカには所有欲が満たされるなどの良さが、それぞれあるからです。また、想像力を広げるためには、比較的何にでも使えるものの方が良さそうです。
まとめと参考文献
今回の記事を参考にすることで、それぞれのおもちゃについて、「このおもちゃは催眠効果を醸して子供をうっとりさせつつ、手先の能力を高めるのに役立っているのだな」とか、「このおもちゃにおける『できごと』はこういうことなので、この子はハマっているのだな」とか、子供がなぜそのおもちゃを気に入って遊んでいるのか、少し解像度を上げて観察することができるのではないでしょうか。そのような視点があって初めて、子供に適切なおもちゃを与えることができることでしょう。
実際に子供におもちゃを与えるにあたり、どのあたりから始めればよいのか、という点については次回の記事でまとめます。この記事はこのへんで。
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