ぽよろぐ

30代父の書く、育児のこと、お金のこと、仕事のこと。

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

地方選挙に承認投票を導入してはいかが?

地方選挙の投票数についてのギモン

地方選挙に行くに当たり、投票できる候補者数が1名だということに違和感を覚えた。私の地域では、議会の定数が40名の地域に候補者が60名弱いる。1人の有権者が投票できるのは60名の中の1名の候補者だけ。

同じ首都圏でも、例えば横浜市は、市内をいくつかの区に区切り、1区で候補者が10人弱、当選者が5~7人くらいになるようになっている。10人の中から1人を選ぶのであれば、まだわかる。

疑問の深掘り

もう少し考えて、現状の地方選挙のやり方の課題をまとめてみた。参考にしたのは総務省がまとめた「地方議会・議員に関する研究会 報告書」のうち、現状の地方選挙の方法(大選挙区単記非移譲式投票)に起因する問題をまとめた部分。

最低当選得票数が低い

例えば有権者数約30万人強の品川区において、2015年の統一地方選における最低当選得票数は1,700票だった。すなわち全有権者の0.5%が承認すれば議会に当選することができる。

最低得票数が低いということは、組織票を集めやすい共産党公明党にとって戦略が立てやすい。特に公明党候補者の得票の効率の良さは芸術的で、投票ラインギリ上の得票で全員当選させている。今回の統一地方選でも、公明党は全員当選を謳っている。

f:id:el_pollo_loco:20190418230955p:plain

赤が共産党、黄色が公明党、青がそれ以外(自民、民主、無所属、その他)

有権者が負う「情報コスト」が大きい

最適な1人を選ぶために、60人分のプロフィールを見ることが要求される。受かるかどうかわからない1名を選ぶために、候補者全員のプロフィールを見ることは明らかにコスパが悪い。

ここで「情報コスト」に関して補足すると、「実際の有権者は60人の候補者プロフィールを比較する能力がそもそも無い」のではなく、「忙しい中そんなに吟味してらんねーよ」ということだと思う。

こうして見返してみると、先の品川区の2015年の選挙結果において、上位2名の当選者が圧倒的な集票を見せているのは、もしかしたら「情報コスト」が関係しているのかもしれない。が、いかんせんサンプルが1つだけだとなんとも言えない。

有権者が本音と異なる候補者に投票しうる

単記式非委譲式の投票だと、落選者の票は死票になる。有権者としては、せっかく情報コストを払って投票した票が無駄になるのは最も分が悪い。

研究でも確認されていることだが、このようなケースでは、有権者は仮に第一希望の候補が落ちそうな場合、受かりそうな別の候補に投票することが確認されている。つまりその分、本当の民意を反映しない投票となる可能性が高まる。

改善案

大選挙区単記非委譲式の課題をまとめると、

  1. 最低当選得票数が少ない&本音と異なる候補者に投票しうる →選挙結果が本当の民意を反映しない
  2. 情報コストが高い

となる。

ここでは1. に対する改善案として、承認投票方式の導入を挙げる。

承認投票(Approval Voting)の導入

1つ目の提案は、投票方式を変えることによって、同じ選挙でも、より本当に民意に近い結果が得られるんじゃないの、ということ。ここで提案するのは承認投票という方式です。

承認投票とは、全候補者に対し、承認/非承認のチェックを付けて投票する方法のこと。日本だと、最高裁判所裁判官の国民審査が一番近いかもしれない。

ちなみにこちらが承認投票の投票用紙例。

f:id:el_pollo_loco:20190419002036p:plain

承認投票の投票用紙例

承認投票のメリットは、単記投票よりもより正確に民意を表すことができる点。またその結果、特に少数政党にとって、承認投票だと支持率が上がる点。

例えば今の地方選挙のような単記制の選挙で、そこそこ応援している圧倒的与党と、個人的に応援している弱小野党の候補の2択まで絞り込んで、なんとなく与党側に投票する、なんてケースはあると思う。この場合、応援している気持ちにかかわらず、野党側への思いは選挙に全く反映されない。

承認投票のメリットは、ある候補者Aへの思いは、別の候補者Bへの投票行為と完全に独立したものにできること。

 

アメリカで実際の大統領選挙を使って、単記投票と承認投票を比較した例がある。この研究では、実際の選挙は単記投票で行われたが、出口調査の形で、同じ投票に対して承認投票もしてもらった。

上から順に、単記投票の結果と、承認投票の結果。

f:id:el_pollo_loco:20190419003842p:plain

単記投票の結果

単記投票の結果、オバマが圧倒的な票を集めている。集票数で3位であるステインとの差は27倍だ。

 

f:id:el_pollo_loco:20190421141644p:plain

承認投票の結果

ところが承認投票の結果では、承認率でステインが2位、その値もオバマの半分弱と、善戦している様子が伺える。他の候補の投票結果も、単記投票結果に比べて向上している。肝心なのは、こちらの結果の方がより正確に民意を表しているということだ。

承認投票の他のメリットとして、投票用紙がマークシート方式になると、集計作業も効率化できる点などもある。諸々は承認投票について参考にしたのはこちらのサイトにまとまってます。

www.electionscience.org

 

地方選挙の方法については、おときた駿もブログで言及している。

otokitashun.com

おまけ:投票とマーケティング

選挙方式を考えるに当たり、例えば投票用紙に1人の名前を書けるか、3人の名前を書けるか、によって、有権者の行動が、耐久消費財を買う場合と消耗品を買う場合の消費者の行動のように変わるのではないか、という仮説を立てた。

例えば車のような耐久消費財を買う際、消費者は様々なパラメタを吟味した上で、1つのみの製品の購入を決断する。単記投票の場合には、有権者の心持ちはこうなるんではないか。

これに対して消費財を買う場合、消費者はより気軽に複数製品を購入した上で比較したり、気に食わない製品から別の商品に乗り換えることも可能だ。連記投票にはこのアナロジーが使えるんじゃないか。

 

…なんだけど、マーケットシェアのグラフだけ作って挫折しました。

f:id:el_pollo_loco:20190418232045p:plain

消耗品の例としてベビー用おむつのシェア

このグラフのソースはこちら。

f:id:el_pollo_loco:20190418232119p:plain

耐久消費財の例として自動車販売台数

このグラフのソースはこちら。